インターネットの発達によりメディアから発信される情報量は増加しているが、人間の情報処理能力には限界がありその全てを利用することはできない。人びとはその中で自分にとって必要な情報を効率よく選択し利用していると思われる。特にある商品を選択するという目的を持った購買行動においては、情報の過負荷を軽減し限られた認知資源の配分を効率化しようと、消費者はメディア情報を受け取るだけではなく、能動的な個々の「使用」戦略を発揮していると考えられる。 本研究は、購買行動の中でも過去の経験が少なく高額でリスクが高いために多様な情報源に接して問題解決をするとされる、住宅の購買行動を研究対象に、消費者のメディア情報の「使用」戦略を明らかにすることを目的とする。新築マンション購入予定者11名の検討活動日記を、約1週間ごとにe-メールで送付してもらうことで、質量ともに高いデータをリアルタイムで収集し、その中からメディア情報の「使用」場面を抽出して分析した。 そしてその結果、以下の4点が明らかになった。
1.住宅購入におけるメディア情報の「使用」戦略は、2つの探索パターンの組み合わせであること、ひとつは日常的に関連する情報を広範に渡って収集する「日課的情報収集」、もうひとつはさらに詳しい情報を求めて同一情報源に複数回接触する「集中的情報収集」であり、その両者は同時並行で行われている。
2.「日課的情報収集」は自分にとって入手しやすいメディア情報を中心に行われ、メディア情報との接触自体が楽しみや購買行動の充実感として満足をもたらしている。
3.「集中的情報収集」においては、自分の信頼したメディア情報に依存し、それに繰り返し接触する。またメディア情報を使用しない直接行動も併用されている。
4.インターネットを利用した情報行動は直接行動以前に十分な検討が行えるので、直接行動以降の意思決定がはやく、インターネットを利用しない情報行動よりも検討期間が短い傾向があった
インターネットの発達は、消費者のメディア情報の「使用」戦略を進化させ、日常的に楽しみながら多くの情報に接触することを可能にした。この消費者の戦略に対応することで、企業側も新たな情報提供戦略を描くことが可能になると思われる。
京ヶ島弥生(2002.3)
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京ヶ島 弥生 (きょうがしまやよい)
2002年度法政ビジネススクール・田中洋研究室
現在、有限会社フロスヴィータ代表。マーケティング・プランナー。
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※本研究は(財)吉田秀雄記念事業財団の平成13年度(第35次)の助成研究です。
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